こころの病気は、大きく三つに分けることができます。
一つは、からだの病気と同じように、いろいろな検査で調べると、ここに原因があるとその原因がはっきりと分かるもの。
つぎに、からだを調べても原因ははっきりしないが、どうやら、家事や育児、仕事や勉強、周囲の人間関係などのストレスが誘因となり、調子を崩しているらしいもの。
三番目には、からだを調べても原因が分からず、生活上、さほど無理をしていないにもかかわらず、調子を崩してしまっているもの。
ひょっとすると、これら三つが、びみょうに重なり合っていることもあるかもしれません。
しかし、以上三つにおおまかにこころの病気を分け、それぞれに該当しそうな病気について簡単に説明してゆきましょう。
からだに原因があるこころの病気
認知症
軽い物忘れから生活に支障のある物忘れまで、進行の具合を見きわめながら状態にふさわしい治療を考えていかなければなりません。
(身体)医学的状態による精神疾患
ホルモンのバランスの崩れなど、からだの不具合が原因でさまざまな精神症状を呈することがあります。原因をとり除くことができればよくなる病気です。
ストレスなどによるこころの病気
うつ状態
とても広い概念です。さまざまな原因によってうつ状態は生じます。
しかし、ストレス性のものが最も多いでしょう。不眠や意欲の低下、集中力がつづかない、といった症状が出ます。
適応障害
生活状況の負担が強く、それまでふつうにやれていたことがやれなくなるなど、うつ状態に近い状態が現れるとき、この病気を疑います。
自律神経失調症
更年期など身体の不調から起ることもありますが、ストレスが原因のものも多いです。
微熱や頭痛、吐き気や下痢、のどの違和感など、さまざまな症状が考えられます。
原因がはっきりしないこころの病気
うつ病
気分が落ち込み、仕事や趣味などに興味を感じられなくなる場合にうつ病を疑います。早朝覚醒型の不眠、気分の日内変動(午前中がとくに悪い)などがみられるようなら、こじらせる前に受診しましょう。
双極症
躁状態とうつ状態の両方がみられる病気です。
うつ状態とは気分が落ち込み、喜びの感情を失ってしまう状態です。
躁状態とはその反対で、気分が高ぶり考えが次々と浮かんでくる状態です。うつ病とは使う薬も違ってきます。
また、躁とうつの気分の波を穏やかにするには、薬物療法の他に、生活リズム上の工夫も必要です。
不安症
普段の生活の中で、不安になることは誰にでもあります。進学や就職などで新しい環境に入っていくときには、誰だって不安になるでしょう。不安は自分を守るために必要な、こころのアラームでもあるのです。 しかし、その不安が行きすぎてしまうと、生活に支障をきたすようになります。例えば「急に体調をくずすかもしれないと思い、電車に乗れない」など、行き過ぎた不安を感じるようになった状態を「不安症」と呼びます。
パニック症
パニック発作(突然、動悸、呼吸困難感、発汗のような身体の症状が出て、そのために「死んでしまうのではないか」と恐怖する)が2回以上起こり、またその発作が起きたらどうしよう(予期不安)から、外出などが極端に制限されてしまう病気です。
病気不安症/心気症
病気不安症とは、自分が何かしら重篤な病気にかかっているのではないかと思い込み、強い不安が生じる疾患です。さまざまな検査を行っても、実際にどこが悪いということはないのですが、重篤な病気にかかるかも、といった不安は簡単に拭い去ることはできません。やはりうつ状態を伴います。いろいろな病院を訪ね歩いてしまったりもします。
恐怖症
自分ではおかしいと感じてはいるけどある特定のものがこわいとどうしても思えてしまう病気です。 犬や猫が怖かったり、尖ったものが怖かったり、いろいろな恐怖症があります。
強迫症
これも自分では変だと感じているのにあることを考えたり行なったりしないと不安が襲ってくる病気です。病気が重くなると日常生活が症状に妨害されてなかなかスムーズに進みません。
社交不安症
かつては対人恐怖症といい、性格だから治らないとも言われていました。人前で上がってしまう、字が緊張して書けない、外食ができないなどの症状があります。
身体症状症
ひとことで言うと心理的なストレスなどがからだの症状として現われてくる病気です。あるとき詰まっていた鼻がすっと通るようによくなることもありますが、治療には時間がかかることが多いです。
妄想症
自分が四六時中だれかに見張られているとか、インターネットを通じて自分の個人情報が広まっているとか、事実と反する疑いにとらわれているとき、この病気を疑います。
しかし、少量の薬でとてもよくなることもある病気です。
自閉スペクトラム症
対人関係、とりわけコミュニケーションが苦手で、興味・関心の幅が著しく限られていたり、こだわりが強いという2点が特徴です。「障害」ではなく「個性」ととらえ、周囲との折り合いを図ることや、周りの理解による環境調整も必要です。
注意欠如多動症
不注意、多動性や衝動性等を特徴とする発達症の一つです。「障害」ではなく「個性」ととらえ、周囲との折り合いを図りつつ、生活上の工夫や環境調整も必要です。薬物療法にて症状の改善を図る場合もあります。
統合失調症
思春期すぎにだんだん考えのまとまりが悪くなって周囲の人とのコミュニケーションがとりづらくなるようなとき、この病気の初期を疑います。早期の治療開始が良好な予後に関連すると言われています。
このような症状でお困りではありませんか?
不眠
| 寝つきが悪い |
| 早く目が覚めてしまう |
| 寝たはずなのに寝た気がしない |
| …など |
食欲不振
| 食欲がない |
| 食べてもおいしくない |
| のどがつまる |
| いつも吐き気がする |
| …など |
消化器症状一般
内科で異常が見つからないにもかかわらず
| 吐き気 | 嘔吐 |
| 胸やけ |
便秘 |
| 下痢 | 緊張すると下痢になる |
| 胃の痛み | 胸が苦しい |
| …など | |
耳鼻咽喉科的症状
耳鼻科で異常が見つからないにもかかわらず
| めまい | 耳鳴り |
| 聴覚過敏 | 咽頭異物感 |
| 口が渇く | |
| …など | |
神経学的症状
| 頭痛 |
| からだの原因不明の痛み、しびれ |
| 寝ているときの足のむずむず感 |
| …など |
不安
| 原因不明の不安感 | ||||||||
| いてもたってもいられない感じ | ||||||||
| 動悸 | ||||||||
| 息が吸えない恐怖感 | ||||||||
| ある特定の状況下での不安 たとえば…
|
||||||||
| …など |
うつ症状
| いつもやれていた仕事ができない |
| 意欲がわかない |
| 集中力がつづかない |
| 仕事のある朝、からだが動かない |
| 先のことを考えては絶望的な気分になる |
| 焦りだけが空回りしている |
| 死にたいという気持ちから逃れられない |
| …など |
思考の面で
| 考えのまとまりが悪い |
| 考えがちゃんと進んでいかない |
| 逆に考えがどんどん進む |
| 考えが自分の考えではないように感じる |
| おかしいとおもっても同じことをくり返し考えてしまう |
| …など |
行動の面で
| たくさん食べてしまうのが抑えられない |
| 体重を気にして食事が取れない |
| むなしい気持ちになって剃刀で手首を傷つけると落ち着く |
| 死のうと思って何らかの行動をとったことがある |
| おかしいとおもっても同じことをくり返し行なってしまう |
| …など |
コミュニケーションの面で
| 人とうまく関われない |
| 自分には常識が欠けているような気がする |
| 職場にきびしい上司がいる |
| 育児で悩んでいる |
| 家族関係がうまくいっていない |
| …など |










